清泉寺長太郎焼窯元の薩摩焼

黒千代香を生んだのは初代長太郎、伝統を静かに今に繋ぐ長太郎焼の器

清泉寺長太郎焼窯元の器はどれも〈黒〉が醸し出す存在感が強く、机の上に映えます。
黒、といっても真っ黒ではありません。陽の光に照らすと、土の色が感じ取れます。
お茶や珈琲を注ぐと、長太郎焼の黒が、飲み物の色を柔らかく包み込むようです。
薩摩焼、と聞くと焼酎が思い浮かびますが、お茶と珈琲とも、かなり似合います。

清泉寺長太郎焼窯元を訪ねて

清泉寺とは、廃仏毀釈で現在はもう跡地しか残されていない、鹿児島市下福元町の土地。
慈眼寺と同じ日羅上人(にちらしょうにん)が開いたと云われているお寺です。
少し下るとすぐに車通りの激しい産業道路に出るのに、
この窯元の周辺は時間が引き伸ばされたかのように、ゆったりと、静か。 初代長太郎が明治31年にここに窯元を開きました。
ちなみに、『長太郎焼』を命名したのは鹿児島の画聖・黒田清輝。
彼に一流と認められたといいます。

現在は、そこから続くこと110年。
有山明宏さんが清泉寺長太郎の窯主として、ロクロに向き合う日々が続いています。
最近は珈琲などを飲むためのコップの注文が多いのだそう。
取材をさせていただいた日も、黙々とコップを造り続けていました。

薩摩焼だからといって、陶器だからといって、
陶器が持つ従来のイメージにまったく縛られていません。
工房には、試行錯誤の実験の途中経過があちらこちらに転がっています。
「もっとここをこうしたら、現代の人たちにも馴染む、使いやすいものが出来そうな気がして」
と、とても柔らかい物腰で笑ってそう話してくれました。

薩摩焼というと焼酎の湯呑み、がついつい浮かんできそうですが、
カップ&ソーサーなど一風変わった器が多いのが
清泉寺長太郎焼窯元の器の特長。

私たちの暮らしのなかに自然と溶け込む、そんな薩摩焼があるかもしれません。


この日も、さわさわと風が通り抜ける窓の側で、ひたすらロクロを回し続けていました。